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2008-11-16

タロット月の世界の版画  日和崎尊夫

木口木版(こぐちもくはん)という技法は、あまり知られていないと思います。柘植などの固い木にビュランという細かい部分を彫れる彫刻刀で彫って行く技法で、イギリスで始まったので「西洋木版」などともいわれています。
日本では日和崎尊夫という作家がいました。
この作家の版画は、内面のゆらぎ、息づかい、深淵、・・・・・・が凝縮されていて、版画として静止しているはずの刷られた紙から、うごめくものを感じます。

タロットカードでは18、月という感じがします。タロットカードの月は無意識を表します。不穏なもの、それは自分の心の奥深いところから、せりがあってくる、コントロールできない、心の闇の部分。

最も作品として圧倒されるのが「カルパ」のシリーズだと思います。カルパはサンスクリット語で「劫」という意味で、法華経の中にある言葉。宇宙的な永遠の気が遠くなるような時間という意味だそうです。
作家は一時期、心のバランスをくずしたのですが、法華経の思想に触れ、作品に昇華することで、回復していったそうです。

残された作品は500点以上。木口木版って普通の版画より、彫るの時間かかるんです。版木とむきあって、ビュランという彫刻刀で、自分の混沌とした心をすくいあげ、刻んだ時間がどんなに長かったか・・・
日和崎尊夫は版を彫るという行為で、この世界とつながっていたのかなと思う。

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