吊るされているという意味
吊られた男には、いくつかの層で読める意味があります。

1.罪と犠牲の象徴
彼は罪人として吊るされています。でもその罪は、必ずしも本人のものとは限りません。キリストの磔を思い浮かべると「犠牲」という言葉が浮かびます。濡れ衣を着せられながら、ただ耐え忍んでいる姿。中世の見せしめの刑のように、理不尽な力によって宙に浮かされている。吊られた男は、不当な状況の中で沈黙を選んでいる人の姿でもあります。
2.地上から足が離れること
人間は足で地上を踏みしめ、力強く生きることができます。地上との接点を失った時、人は「幽霊」のようになってしまう。生きることへの踏み台を失った状態です。足が地上から離れているということは、現実との接点が切れているということ。それは喪失でもありますが、同時に「地上の常識から自由になった」ということでもあります。
3.引きこもりと母離れ
吊られた男の数字は12。1+2=3。3は女帝、つまり母親を象徴します。母親との関係がうまく切り離せなかった結果として、宙ぶらりんの状態が続く。母親の犠牲になってしまい、永遠に「できない子供」を演じ続けている。
現代の引きこもりがこのカードに重なるのは、そういう理由からかもしれません。ユング心理学で言えば、グレートマザー(太母)に呑み込まれた状態です。母というのは実の母親だけではありません。会社・社会・宗教・慣れ親しんだ場所。そういった「大きな母」から切り離されることへの恐怖が、足を宙に浮かせたまま固定させているのかもしれません。
4.意志は隠されている
彼の足を縛る縄は、よく見ると弱々しい。意志があれば抜けられる。でもその意志はまだ隠されています。手を背中に隠しているのがその証拠です。「自由になりたい」「脱出したい」という意志を隠している。それを表に出す勇気がまだない。犠牲であることをやめるのは、それほどの勇気が必要なのです。
5.逆さまから見える世界
逆さまに吊られることは、体には辛い。でも逆立ちは健康に良いとも言われます。逆さまから見える世界は、常識を覆す視点を与えてくれます。右が左になり、上が下になる。今まで「当たり前」だと思っていたことが、全く違って見える。その視点の転換こそが、吊られた男が持つ最も大切なギフトです。
頭に後光が差しているのはそのためです。苦しい宙ぶらりんの時間の中で、無意識から新しいアイデアと洞察が降りてきている。
6.ここからの脱出は死神以降
この状態から自力で脱出しようとしても、まだその時ではありません。次の死神(13番)が来た時に、古い自分が完全に終わりを迎える。その後に初めて、新しい自分への扉が開かれます。吊られた男は「今はまだその時ではない」というカードでもあります。
絵から吊られた男を考える
下の図は松村潔先生が考えた惑星の対応です。上側は常識的な顕在意識を超えた超意識・・みたいな天体です。なので宇宙・神そんなイメージもあるかもしれません。そこに吊るされている絵ですから、「宇宙から役割を与えられている」といった様子でもあると思います。この地球でやらなくてはいけない役割がこの男にはあるのではないか?って思ってしまうのです。

この配置では真ん中の月・太陽・土星・冥王星は心の中の軸みたいなエネルギーです。吊られた男は冥王星という死と再生の星から直流になってエネルギーが落ちてきている。冥王星は死と引き換えにでも大事にしたい価値ですから彼はその価値以外は選べない人生なのだと思います。
頭に後光が差していてアイデアが湧いたりしている様子とも言えますね。そのアイデアは彼の真似っこでない深い部分から生まれたもので彼だけが実行できるものなのです。彼は選ばられし勇者なのであります。
好きなことだけで行動はできませんが、宇宙からよしと言われたことに関してはどんどん進んでいきます。あなたもそんな瞬間が今までの人生であったかもしれません。それは吊られた男のあり方を受け入れた瞬間だったのだと思います。
吊られた男が象徴する元型|死と再生の通過儀礼
吊られた男が象徴する元型|死と再生の通過儀礼
苦しみの男は「死と再生の通過儀礼(イニシエーション)」の象徴として読むことができます。多くの文化に「成人の儀礼」があります。若者が一定期間、孤独の中に置かれ、試練を経て新しい自分として集団に戻ってくる。
その孤独の時間が、吊られた男の状態です。古い自分が死に、新しい自分が生まれる。その変容の途中にいる人間は、必ず宙ぶらりんの状態を経験します。
もう元の場所には戻れない。でもまだ新しい場所には行けていない。その間の苦しさが、吊るされている状態の本質です。そこから考えると引きこもりは逃避ではなく「通過儀礼の途中にいる状態」として読めることがあります。
外の世界のペルソナを一度脱ぎ捨てて、内側の本当の自分と向き合う時間。その時間なしに、本当の意味での自立はやってこないのかもしれません。ただし通過儀礼には「戻ってくる」という過程が必要です。吊られたままでいることは目的ではありません。次の死神で、その古い自分が完全に終わりを迎える時が来ます。
吊られた男のメッセージ
・今は辛抱の時
・運命を受け入れよ
・自由に動けない
・好きな人に会えない
・案件ストップ
・幽閉されている
・入院している
・アイデアを出せ
・孤独を愛せよ
・犠牲になりやすい
・濡れ衣を着せられる
・罪を犯す
・罰を受ける
・人に会わず引きこもる
吊られた男逆位置のメッセージ
・自由に向かっている
・役割から解放される
・犠牲から解放される
・自分の手のうちを明かす
・出所
・退院
・自由を手にする
・恩赦
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